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76.殺人鬼とおっさん―7

「ワシの殺人は、殺した者の血で刻印をすることによって、始めて完結するんじゃ! あやつの刻印はまだしていないから、まだカウントはしない決まりなのじゃ!!」


 まるで自分の気に入らないことがあった駄々っ子のように、甲羅の上で飛び跳ねるハヌ・トゥ。

 その様子も異質で不気味だったが、思った通りだと、グルゥはしたり顔で頷いた。


(異常者のようだが、やはり自分のプライドを一番に考える、職人気質のようだ。それなら――)


 背中を向けたハヌ・トゥに対し、グルゥはまず、自らの脇腹に刺さっていた甲羅のトゲを引き抜いた。

 激痛がはしり、朦朧としていた意識が一瞬で覚醒する。


 今はこれでいいと、そう思っていた。


「食らえッ!!」


 手にしたトゲを、力任せに投げつけるグルゥ。

 ハヌ・トゥは即座に反応し、甲羅の中から拾った短刀で応戦しようとしたが、


「おやおや? これはとんだ、慌てん坊さんだったようじゃのぅ」


 明後日の方向に飛んでいったトゲは、ハヌ・トゥの横を通り過ぎていく。

 その様子を、ハヌ・トゥはニヤニヤと笑いながら見ていたが。


 ボゴッ、と鈍い音がして、グルゥの体は川を流れ出していった。


「……お? お、お、お!? ま、待て待て待てッ! どんぶらこと流れ出しおって――」


 慌てふためくハヌ・トゥ。

 グルゥが狙っていたのは、始めからハヌ・トゥではなく、銛の縄が巻き付けられた柵だったのである。


 勝ち目がなければ一度退くしかないと、初めから考えた上でのグルゥの行動だった。


(だ、が……私の体力も、そろそろ、限界……か……)


 川の流れに呑まれ、グルゥの体はすぐに見えなくなってしまう。

 それと同時に、グルゥの意識もブラックアウトしていった。

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