8.決着とおっさん―5
グルゥは考える。
今ここでアキトを逃して……その後、自分はいったいどうなる?
変わらずにアキトを付け狙う旅を続けるのか、今度は逆に、アキトから命を狙われるようになるのか。
分からない。
このまま復讐を続けていいのか。
キットを巻き込んでしまった以上、このままでは彼女の命も狙われることになるのだろう。
「んーっ、んーっ!!」
キットは何か言いたげに、声を荒げ暴れ回っていた。
「ちょ、ちょっと静かにしてよ! こっちも、手荒な真似はしたくないんだって!」
マリモは必死にダガーを突きつけキットを押さえつけようとするが、頭に血が上ったキットはそんなのお構いなしに体を動かしている。
「ちょっ、だから危ないって――」
その時だった、動き回るキットの頬にダガーが当たり、大量の血が噴き出したのは。
「言ったじゃん!? 大丈夫っ!?」
心配そうにキットの顔を覗き込むマリモ。
しかし、キットの目は対照的に、マリモに対する敵意で満ちていた。
「ちげぇっ!! 離れろ、マリモ先輩ッ!!」
最初に異変に気が付いたのはアキトだった。
キットは偶然刃に当たって怪我をしたのではない――怪我をするのを覚悟で、強引に猿轡を切りにいったのである。
「キャッ!?」
キットはマリモの手に思い切り噛み付くと、持っていたダガーを取り落とさせる。
そして、体を曲げてダガーを口に咥えると、そのままの体勢で足を縛るロープを切った。




