76.殺人鬼とおっさん―2
「このゴーレム、川の氾濫はお前の仕業か……!?」
「そーなのッ! ちゃちゃッと堰を爆破してねェ! 異世界勇者を炙り出すためだったんだけど――」
襲いかかってきた蜘蛛型ゴーレムをグルゥは拳で叩き壊すが、その中からはさらに、一回り小型の蜘蛛型ゴーレムがうじゃうじゃと湧いてきた。
「うわっ、なんだこれはッ!?」
「もっともっと、面白そーなコト見つけちゃったっ! はーとっ!」
体に纏わり付く蜘蛛型ゴーレムが、小さいながらもその手の刃で皮膚を切り刻もうとしてくる。
だが、『サタン』血統の魔人が持つ頑強な皮膚は、その攻撃を全て弾き返していた。
「こんな小細工如きッ!!」
蜘蛛型ゴーレムの襲撃をものともせず、グルゥは猛然とルルリリに立ち向かっていく。
そして、その拳がルルリリを打ち砕こうとした、その時だ。
「がァッ!?」
突然、真っ赤になる視界。
顔の周辺にくっついた蜘蛛型ゴーレムが、グルゥの右目を刃で切り裂いたのである。
「うぐ……くそぅ……!?」
「小細工でも、アンタみたいなウスノロ相手だったら十分足止めになんだよ。ちょっとは考えてから発言しろや、この脳味噌筋肉がッ!!」
可憐なルルリリの表情が、一瞬にして憎悪に満ちた醜悪なものに歪んでいった。
手にした工具用のピックを、ルルリリはグルゥの喉元目掛けて突き出す。
目に溜まった血のせいで、グルゥは右半分の視界がよく見えなくなっている。
さらに目だけでなく、鼻や耳から体内に侵入しようとする蜘蛛型ゴーレムの前に、前後の状況もよく分からないパニックになっていた。




