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+++ある晴れた夏の日―8+++

 陽が沈み、町に夜が訪れた頃。

 先生の目を盗んで外に繰り出した少年少女一行は、ホテルの裏手にある山に来ていた。


 その山の中腹には、神社がある。

 日中に神社に置いてきたカードを、指定されたルートを通って回収して戻ってくるという、そんなありふれた肝試しを、一行は行っていた。


 だが――ペアから溢れた少女は一人、スタート地点でつまらなそうに小石を蹴っていた。


「まったく、マリモ先輩ってば、急に割りばしを交換して欲しいなんて言うんだから……こんなことだろうと思ったけどさ」


 黄色の割りばしを持つカエデは、アキトが戻ってきてからの二順目の出発である。

 それまでは、山中で一人、この後に使う花火のグッズの番を兼ねて待機していなければならない。


 夜の山に一人だけというのは不気味だったが、カエデにとってはその時間も苦ではなかった。

 それは、カエデにとっての大切な“相棒”が一緒に居たからだ。


「マリモ先輩って、時々ずるいところあるからなぁ……お前もそう思うだろ? ナナ」


 カエデの呼びかけに、茶色の子犬はバウ? と不思議そうに首を傾げていた。


 ナナはカエデが空き地で拾った、雑種犬である。

 それまでペットを飼ったことがなかったカエデにとって、ナナの存在は非常に愛おしいものであり、どんなところに行くのにも一緒に連れて歩いていたのだ。


 しゃがみ込み、ナナの首の下を優しく撫でるカエデだったが、その時突然ナナの様子がおかしいことに気が付いた。

 暗い茂みの方をじっと見つめて、グルル、と低い声で唸り声をあげている。


「ん……? どうしたんだよ、まさか、そっちの方に何かいるっていうのか」


 滅多に見たことがない、牙を剥き出しにするナナの姿に、カエデは嫌な予感を覚えた。

 そして、そろりそろりと、ゆっくりと茂みに近付いてナナの視線を先を確かめようとした瞬間――


「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


 カエデの絶叫が、夜の山の静寂を切り裂いた。

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