75.賊・強襲とおっさん―6
気が付けば、周囲は正体不明の六本足の球体に埋め尽くされていた。
「ぎゃあッ!?」
「うわああああ、だ、誰かぁっ!!」
あちこちから響き渡る悲鳴。
みな、六本足の球体に襲われているようだ。
「ぐッ、こんなものォ……!!」
執拗に足元を斬り付けてくる球体に、シュテンは“鬼殺”の先端を突き刺した。
六本足の球体は、その途端にバツンと小さな爆発を起こして、煙を上げて動かなくなる。
「き、機械……? いや、これは、ゴーレムか……!?」
フォルを動力源として自動で動く機械人形が存在することは、シュテンも知識としては知っていた。
だが、このような小型の殺傷兵器は始めて見るもので、宵闇に紛れて足元から襲い来る動きは、大太刀を振るうシュテンにとって最も苦手とする戦い方である。
「棟梁、何なんですか、コイツはッ!?」
「わ、分からねぇ!! だが、こんなモンが持ち込まれてるってこたぁ……一連の騒ぎは、何者かによって引き起こされてるってこったな……ッ!!」
そして恐らく、最愛の息子であるクリクを襲ったのも、裏で糸を引いている黒幕の仕業だとシュテンは確信する。
何としてでも、そいつをとっちめたいと考えるシュテンだったが――
「……う、うそだぁ、こんな……っ」
目の当たりにした光景に、その思考はフリーズし、恐怖を超えた絶望にその身は支配された。
荒れ狂う、氾濫寸前の川の流れ。
その水面を覆いつくすほどの、夥しい量の蜘蛛型ゴーレムが、流れに乗って下流に辿り着こうとしていた。




