8.決着とおっさん―4
「全部、でまかせだったのか。大人が嫌いだと言った、あの言葉も」
「さーね。嘘つきだから、俺」
アキトはそう言うと、足を引きずりながらマリモの方へ向かおうとする。
流石にそのダメージまでは、隠すことは出来ないようだ。
無防備なアキトの背中を見て、グルゥはぎゅっと拳を握り締める。
(今なら……後ろから殴って、あの後頭部をかち割ってしまえば……)
黒い考えが自分を支配していることを感じ、グルゥは何度も首を横に振った。
今は、キットが人質に取られているのだ。
あれだけ復讐に巻き込まないと決意したはずなのに、結局、最悪の形で、キットをこの場に連れて来てしまった。
自分の復讐とキットの命、二つを天秤にかければどちらが重いかは、明白だった。
「ねぇ、もうこの子解放していいんでしょ? アキト」
「いや、まだだ。まだ、あのおっさんが後ろから俺を狙ってるからな。十分に距離を取ってからだ」
見透かされているのか? と思い、グルゥは自身の胸に手を当てた。
『憤怒』の炎はまだ燃えていて、しばらくは消えそうにない。
「一つ……聞かせてくれ。何故キットが私の仲間だと、分かったんだ」
グルゥの問いかけに対し、アキトはバーカ、と一言置いてから答える。
「こっちには優秀なリサーチャーが居るって言っただろ。人の命を狙うってことは、逆に狙われるってことだって理解しろよ」




