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75.賊・強襲とおっさん―1

 逃げるマリモの太ももを、甲羅から発射された棘が掠めた。

 鬼装束が引き裂かれ、じんわりと血が滲んで流れ出す。


 痛みに耐えかね、座り込むマリモ。

 背後には、徐々に水かさが増していく川が流れている。


 これ以上の逃げ場は、ない。


「『魔弾の射手(フライクーゲル)』――」


「ひょーっひょっひょ! 何度やったって、同じことじゃよ」


 マリモが放った光の矢は、いかなる矛も通さない絶対無敵の甲羅によって阻まれた。

 甲羅を背負っているのは、山羊のような顔つきの『レヴィアタン』の老人――ハヌ・トゥである。


 一緒にアガスフィアに転移してしまったことは知っていたマリモだったが、まさか、こんなところまで追って来ていたとは。

 それも、テンザンの中で会うなんて夢にも思っていなかったので、孤立中のマリモにとっては最悪のタイミングだった。


「なぁなぁ、もう分かったじゃろ? お嬢さんの攻撃は、ワシの甲羅の前にはまったくの無意味なんじゃよなぁ」


「だ、だからって……! あなたの好きにさせるわけには……っ!」


「そうやって意地を張っていても、周囲に迷惑をかけるだけじゃぞ? お嬢さんが余計な抵抗をしなければ、この村は水の中に沈むことはないのじゃ」


 そう言って、先の割れた舌を白髭の下からチロリと見せるハヌ・トゥ。


「まさか、この川の氾濫もあなたたちの仕業――」


「いぇーす、いぇすいぇすその通りじゃ。この村の中でお前さん達を捕らえるには、どうしてもオーガ達を無力化する必要があったからのぅ」


 ハヌ・トゥはあっけらかんと言い放つと、好々爺のような笑みを浮かべながら言った。


「まっ! こうしてお嬢さんが単独行動をしてくれたなら、まったくの無駄な行動じゃったけどな!」

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