74.強襲とおっさん―7
パン、と扇を閉じたルキは、その先端でグルゥを指した。
「まあ、多少は大目に見てくれ。そのおかげで、お主ら無実を証明することも出来たのじゃ」
「どういう意味だ」
「クリクが何者かに襲われたのはシュテンから聞いておる。また、傷だらけになる直前、お主らの元へ行っていたのものな。じゃが、その間、お主の仲間はみなリンメイと交戦していたはずじゃ」
「あ……確かに」
図らずとも、リンメイの襲撃がシュテンからの疑惑を晴らしていたことに気が付き、グルゥは内心、ホッと胸を撫で下ろした。
「そ、そこまで分かったなら、早くキットたちの魂を解放しろ!」
「分かっている……あまり大きな声を出すな、苛つく」
リンメイの鬼灯から、薄い緑色の光が飛んだかと思うと、キット、ミノン、ブランの三人の体に吸い込まれていった。
すぐには目を覚まさない三人だが、なんとなく息遣いに生気が戻ったような気がして、グルゥは大きく息を吐く。
「……っとと」
気が抜けたのか、足元がふらつきグルゥはその場に腰を下ろした。
それを見て、シュテンはバンッと両手を床につき、物凄い勢いで頭を床に擦り付ける。
「すまんッ!! グルゥさんッ!! 俺ぁの勝手な勘違いで……なんてことを……!!」
「わ、分かった。お前の気持ちは十分に分かったから、そんな豪快に頭を下げないでくれ。……同じ父として、お前の行動が、理解出来る部分もある」
「グルゥさん……!! あんた、なんてぇ器のでっけぇ漢なんだ……っ!!」
感動したようにグルゥの顔を見上げるシュテン。
殺しに来ていた状態からの変わり身の早さにグルゥは閉口してしまった。




