74.強襲とおっさん―6
「妾が賜ったのは“麒麟知”の能力。このテンザンに降りかかる災いを、妾は未来に行くことで事前に察知することが出来る。じゃが……時の流れは残酷じゃ。未来へと進む正常な流れは耐えられても、過去に戻るためには相当な負担がある」
表情を悟られたくないのか、ルキは開いた扇で自らの顔を覆った。
「妾にかけられた呪いは、“若返り”じゃった。“麒麟知”の能力を使うたび、妾の体は進んだ時間と同じだけ時を遡ってゆく。妾に残された時間は……持ってあと八年、というわけじゃな」
明かされたルキの秘密。
驚いたグルゥは、しばしの間放心状態だったが、
「ま、待て待て。それと今のこの状況、何の関係があるんだ」
だからといって、シュテンやリンメイに襲われる謂れはない。
さすがのグルゥも、これがルキの差し金ということであれば、怒りを隠せないところだったが。
「それは……素直に謝ろう。妾の指示の出し方が悪かったのじゃ」
「……なに?」
「妾の“麒麟知”は、近い将来、テンザンに異変が起こることを予期しておった。だから妾は、リンメイにその異変を排除するよう命令していたのじゃ」
「その異変というのは、私が原因だというのか」
「いや……何がきっかけというところまでは、見えてはおらん。ただ妾に見えたのは、死屍累々、テンザンの地に横たわる死体の山じゃ」
「お前達を捕らえる判断をしたのは、私の独断だ。ルキ姫の“麒麟知”は、外からの異変がテンザンに侵入した時に発動する。この状況に最も合致した外的要因が、お前達だったというわけだ」
顔色一つ変えずにリンメイは言ったが、勝手な勘違いだと、グルゥはムッと顔をしかめて怒りを露わにした。




