+++ある晴れた夏の日―6+++
大浴場からあがった男組も、大部屋へと戻ってきていた。
「いやー、さっぱりしたな。やっぱり風呂はデカイのが一番……って、お前ら!!」
坊主頭をタオルでゴシゴシと拭きながら、ゲンロクは他の男連中に注意をする。
「なんだよ、いきなりデケー声出して」
「部屋に戻るなりスマホとかゲームとか! せっかく海に来たのに、インドアすぎるだろ!?」
ゲンロクに注意されても、アキトはスマートフォンで小説を読み、ユズはポチポチとゲームに精を出していた。
そのガン無視の姿勢に、シノカミは呆れながらも間を取り持つように声をかける。
「アキトは随分に熱心に読んでるけど、何か面白い作品でもあったの?」
「いーや。最近のなろうなんてクソばっかだぜ。どれもこれもチートやハーレム、異世界転移のワンパターンばっか。ご都合主義が過ぎるっつーの」
「は、はは……そうなんだ」
思わぬ酷評が返ってきて、シノカミは苦笑を浮かべるしかなかった。
じゃあ何で読んでるんだよ、とゲンロクからは当然のツッコミが入る。
「別に? 暇つぶしみたいなもんだし。まーでも、この手のなろう系の主人公になってみたい、って欲求があるのかもな。だって世界を自分勝手に動かせたら、サイコーすぎんしょ?」
「うわ、その発言、危険人物だなアキト。ヘンな気、起こすなよ」
ゲンロクに冗談混じりに言われても、アキトはフンとそっぽを向くだけだった。
「それは、この世界で真っ当に生きられるヤツだけが、言えるセリフだろ」
口の中で、誰にも聞こえないようにアキトは独りごちる。
脳裏には、白いビーチでマリモの隣に立つゲンロクの姿が思い起こされていた。
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
その時、突然ユズが大きな声を出したので、全員がビックリしてユズの方を見やる。
ユズは顔面を真っ青にし、今にも泣きそうな声で言った。
「充電、切れちゃったぁ……」




