8.決着とおっさん―1
重苦しい沈黙の時が訪れる。
先程までの饒舌ぶりが嘘のように、アキトはふて腐れたように黙っていた。
「最後に何か……言い残したいことはないか」
そう言っても、アキトはそっぽを向きグルゥを無視したままだ。
カッとなったグルゥは、アキトの胸倉を掴んでレンガの中から引きずり出した。
「何か、反省をするような言葉はないのか!! そう聞いているんだッ!!」
「……うっせーんだよ、ジジイ」
グルゥの拳がアキトの腹を打ち付けていた。
大きく吹き飛んだアキトは石畳の上を転げ回り、十数回転して海に落ちかけたところで、ようやくその勢いは止まる。
「がぁ……っ!!」
血と胃液と吐瀉物と、アキトはその場で撒き散らし、恨めしそうにグルゥを睨みつけた。
「ひ、ひでぇことするな……おっさん。いい年して、こんなガキをいじめて楽しいのかよ」
「馬鹿も休み休み言え。貴様には、そうされるだけの理由がある。自分の胸に手を当てて考えてみるんだな」
グルゥの言葉に、アキトの目に一瞬強い憎しみのようなものが見えた。
が、すぐに伏し目がちになり、グルゥに対して恐れを抱いたのか、それ以上目を合わせようとしなかった。
「……だから、嫌なんだよ」
「今さら、何を――」
「だから嫌だって言ってんだよッ!! 大人ってのは偉そうに講釈を垂れて、ガキは自分の言いなりになると思ってさぁ!! お前もそうだ……あの大人たちと同じなんだ……!!」
それは、アキトが初めて見せた感情に任せての叫びであった。




