72.異変とおっさん―3
「な、なんだいきなり?」
「いきなり、じゃないですよっ!
私、本当に心配したんですっ。カエデが使う『焔殺剣』の炎は、一度当たったら絶対に消えない、って知ってましたから。グルゥさんが、カエデに殺されちゃうんじゃないかって、本当に心配で……っ!」
涙ぐみながら話すマリモ。
嘘や演技には見えないその様子に、グルゥは面食らってしまう。
それに対し、カエデは面白くなさそうにしかめっ面をしていた。
「もういいよ、マリモ」
マリモを避けようとグルゥが体を動かした際にスペースが出来たため、カエデはグルゥの下から這って逃げ出した。
そして、グルゥの肩に突き刺さっていたまま刀を引き抜いて回収すると、鞘に収める。
「私は、アンタのそういうところが嫌いなんだ。心にもないことを、よくもそんな、ぶりっ子で言えるな」
「ちょっと……どういう意味なの、カエデ……!?」
カエデの言葉に、マリモは不快感を露わにする。
だが、カエデの言うこともグルゥには理解出来ていた。
何故なら、カエデから吸収した記憶が本当ならば、カエデがマリモのことを恨むのは当然であるからだ。
だからこそグルゥは困っていた。
マリモとカエデ、二人共に嘘を吐いている様子はなく、本心から言葉を発しているように見えるからだ。
「どうもこうも、あるか。私は、そのお前の分厚い面の皮に隠された、お前の本性を知ってるんだ」
「私の、本性……っ!?」
「だいたい、お堅い神社の生まれを気取ってるお前が、夜な夜な何をしていたか。私は知ってるんだぞ? 言ってやろうか」
問い詰めるようなカエデの言い方に、マリモは少し動揺した様子で、グルゥの肩からパッと顔を上げた。




