+++ある晴れた夏の日―4+++
白いビキニと、麦わら帽子。
まるで水彩画の世界のようなネイビーブルーの海を前にして、砂浜の上に一人立つマリモは、振り向き様にモデルのようにポーズを決めた。
「えへへ、どうかなこの水着は?」
真夏の太陽光を浴びて輝くマリモは、あっという間にビーチの主役、一輪の華となり、周囲の男の目を釘付けにする。
「ず、ずるいマリモっ! 一人だけそんなセクシー路線で……!」
「それはミク、お前がお子様体型過ぎるんじゃないか?」
早速声を掛けてきたナンパ目的の男を、ブーメランパンツ一丁のゲンロクが、その鍛え上げられた体を誇示しながら追い払った。
「さ、さすがにぃに……! マリモに負けず劣らずのセクシー路線っ!」
本気なのか冗談なのか分からないが、目をキラキラさせながらミクはゲンロクを見つめている。
実際、グラマラスなマリモの隣には、立派な筋肉の持ち主であるゲンロクが居るのがよく似合っている。
「む、むりむり。私はやっぱナナと一緒に浜辺で遊んでるっ!」
「あはは、カエデ……。スクール水着が嫌だったら、先生に頼んでレンタルでもしてもらえば?」
その様子を遠巻きに見ているのが、カエデとシノカミの二人である。
シノカミに至っては健康上の理由で、そもそも水着にもならずビーチパラソルの下でくつろいでいた。
「ユズもここでゲームばっかしてないで、行って来なよ」
「……やだ。めんどうくさい」
ユズの素っ気無い答えにシノカミは苦笑する。
すると、突然ユズの顔に、浜辺の白い砂が降りかかった。
「わぁ!?」
「おーっしゃ! 海だ海、いっくぜぇー!」
着替えを終えたアキトが、ユズの脇を猛然と走り抜けていったのである。
スマートフォンの中のゲームはその間にゲームオーバーとなり、ユズはぷるぷると肩を震わせていた。
「アキトのバカっ、何するんだよーっ!!」
アキトを追いかけ浜辺に飛び出したユズを見て、シノカミは穏やかに笑っていた。




