71.続々・鬼とおっさん―5
「待たせた、な」
「遅い。既に約束の時間から三十六秒の遅刻だ。本当に私に協力する気があるのか?」
カエデに指定された、村の外れの一本杉の下。
やっとの思いで辿り着いたグルゥを待っていたのは、侮蔑するようなカエデの視線だった。
「まあ……その答えは、お前の姿を見れば明白だな。まさか、酒を飲んで来るとは」
「ちっ、違う違う、これはどうしても断れなくて……っ!」
酔っ払ってふらふらのグルゥを見て、カエデは批判の言葉を発する。
グルゥは慌てて弁解をしようとしたが、
「……まあ、そんな言い訳は、いいか。カエデ、お前の言う通りだ」
この期に及んで、取り繕う言葉は必要ないと。
そう割り切ったグルゥは、じっとカエデの目を見据えながら言った。
「私は、マリモを殺すことに協力するつもりはないよ。だから今日は、お前を止めに来た」
「ほう? ……力ずくでも、私を止めるつもりか」
「い、いや、戦おうなんてそんなつもりはない! 私はただ、和解の場を作ろうと思って――」
「もう、いいですよ。グルゥさん」
グルゥの言葉を遮って、一人の少女が後ろの木陰から現れる。
「カエデが、どうして私のことを目の敵にしてるのか……それは、私から直接聞きますから」
姿を見せたのはマリモ。
ここに来る前に、グルゥが声をかけて連れ出したのだった。




