+++ある晴れた夏の日―3+++
「バカンスのビーチに、とうちゃーくっ!」
普段よりもちょっとだけ高いテンションで、マリモは大きく伸びをしながら車を降りた。
後ろでは、車酔いからようやく解放されたアキトが、ステップを踏み外し盛大にすっ転んでいる。
「あはは、にぃに見て見て、アキトってホントどんくさーい!」
「こ、こら、指差して笑うなよミク……。先生も、長い間の運転お疲れ様でしたッス」
ゲンロクは年長者らしく、運転席に声をかけながら車を降りる。
車の後ろには、トランクを開け早速荷物を下ろそうとするカエデの姿があった。
「……ん? カエデ、なんかお前それって」
その様子に、妙な違和感を覚えたアキトが近付いていく。
ギクッ、とカエデはあからさまに慌てている素振りをした。
「な、ななな、なんだよアキト。お前には別に関係ないだろ」
「いやいや、妙に一人だけデカい鞄を持ってきて、一泊二日なのにヘンだなって思ってたら……その鞄の中、なんか動いてねーかっ!?」
アキトの指摘に、少年少女たちの視線が一斉にカエデの方に集まった。
カエデがわたわたと戸惑っていると、持っていた大きなスポーツバッグのチャックが、内側から勝手に開けられている。
「な、なに!? にぃに、これはなんてホラー!?」
「お、落ち着けミク! まさか中から、お化けが飛び出してくるなんてそんなことっ」
兄妹で抱き合って、ゲンロクとミクは目の前の異常な光景に恐れ戦いたが――
「わんっ!!」
中から飛び出して来たのは、元気な黒柴の子犬が一匹。
「あはは、カエデ……ナナちゃんまで連れて来たんだ」
車中のシノカミが、振り返りながら穏やかな声で言った。
ナナと呼ばれた子犬は、嬉しそうに尻尾を振りながら、カエデの顔をべろべろと舐め回すのだった。




