70.続・鬼とおっさん―10
――次に気がついた時、ミノンは深い闇の中にいた。
いったい、何があったのか。
それすらもはっきりと思い出すことが出来ない。
ただ、目の前に転がっているのは――バラバラになった、自分の右腕と左脚。
「ひッ――」
恐怖で喉の奥が引き攣り、声を出すこともままならなかった。
この、完全に自らの自由を奪われた空間。
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚――五感全ての自由すらも奪われた世界で、ミノンは永遠とも思える苦痛の中にいる。
「どうだ……話す気になったか?」
ミノンの前には、身長の高い若い鬼が一人いた。
腰には一振りの太刀を提げているが、鞘から抜いてミノンを斬った痕跡はない。
若い鬼は、己の腰ほどまで伸びた黒い髪を、人差し指の先で撫でながら、片腕と片脚を失ったミノンに迫るのだった。
「話すって……何をだよっ!! ボクは、お前にこんなことをされる覚えなんて――」
「あの魔人……そして、君自身に関する秘密だ。君は、言うなれば、そう」
若い鬼の手が、ミノンの顎を掴まえて強引に上を向かせた。
まじまじのその顔を見て、ミノンはある事実に気が付く。
「お前……目が見えていないのか?」
「あまりにも、生命として偽りの気に満ちている。やはり外の人間は……“結界”の中に入れるべきではないのだ」
若い鬼の瞳は真っ白で、目の前にミノンがいるというのに、その先というか、ミノンの後ろ側を見通そうとするような動きがあった。
見えない刃が――ミノンの体の中心を、正確に貫いていた。




