表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/984

7.対決とおっさん―9

 何度も何度も鎖を引っ張られ、その度に首が絞まり、意識が飛びそうになる。


(私は、こんな少年に勝つことすら出来ないのか)


 いくら正体不明の術を使われているとはいえ、その事実はグルゥの心を深く打ちのめしていた。


(こんな、ところで……)


 薄れゆく意識の中、頭の中に浮かぶのは愛娘、ノニムの顔だ。

 連れ去られたノニムは『アガスフィア』でどんな目に遭っているのだろうと思うと、悔しさで涙が溢れそうになる。


「ケッ……雑魚がいきがりやがって。おとなしく言うことを聞けば、命までは取らないでやったのにな」


 グルゥの体から抵抗する力が失われていくのを感じ、アキトはそう毒づいた。

 こうなったら、アキトの言うことを聞くしかないかと……グルゥはそう、覚悟する。


「…………わ――」


「お? やっと俺の犬になる気になったか?」


 妻を殺し、娘を連れ去った憎むべき相手の言いなりになるという屈辱。

 これ以上ないくらいの怒りが、一度は静まりかけたグルゥの血を、熱く沸騰させていた。


「私は、怒っているんだ……ッ!!」


「じゃあ、死ねよ。遊べない玩具に興味はねぇ」


 鎖を引き上げ、吊るしたグルゥの首に剣をあてがおうとするアキト。

 グルゥはその瞬間――アキトが最も接近する瞬間を、限界まで待っていた。


 喉の奥から込み上げた血を、口の中に溜め込んでいたグルゥ。

 勢いをつけ吐き出した血の塊は、鎖を持つアキトの手に直にかかった。


「あっつ……ッ!?」


「『サタン』の血は怒りにより百度近くまで沸騰する。どうやら、調べが足りなかったようだな」


 鎖を取り落とすアキト。

 “活力吸収(エナジードレイン)”の拘束が解けた瞬間に、グルゥの全身の筋肉に血管が浮き出て、その体は変貌を遂げようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ