69.鬼とおっさん―8
翌日、グルゥ達は武士の一団と共に、山岳地帯を登っていた。
向かう先は、アマツ公国の公爵が居るとされる“テンザン”。
言わばアマツ公国の首都となる集落だが、到着までには丸一日山岳地帯を進む必要があり、過酷な道のりを進む必要があった。
だが、アマツの武士達は既に慣れっこなのか、険しい山道をスイスイと進んでいく。
グルゥもそれに遅れまいと、必死になって歩を進めるのだが――周囲の武士達からの、まるで異質なものを見るような視線が突き刺さっていた。
「あ、あの……グルゥさん? 少し、聞いてもいいですか?」
額に汗を流して歩くマリモが、彼らの意見を代弁するように、おずおずとグルゥに話しかけた。
「どうした」
「いや、その……さすがにおかしくないですか!? キットさんを背負いながら、山道を歩いていくのは!?」
そう。
グルゥの背中には、病み上がりのキットがしがみついていたのだ。
またそれだけじゃない、ミノンの身長で進みづらいような大きな段差があれば、ミノンも抱えて先に進むし、父上、父上と、グルゥを慕って歩くブランの面倒も見ていた。
「なんだよお前。オレに嫉妬してるのか?」
「いや、そういう意味じゃなくて……。……ずっとこんな、ハーレムみたいな状態で旅をして来たんですかね?」
「ハハ、これが本当にハーレムなら、どれだけ楽な道筋だったろうか。どちらかと言えば、子守りに近いだろう」
グルゥはそう言ってマリモの疑念を笑い飛ばしたが、子供扱いされて怒ったキットが、後ろからグルゥの髭を引っ張った。
「いでででっ!? 何するんだ!?」
「子守りってなんだよ! オレは親父とのこと真剣に考えてるし、サリエラには絶対渡さないんだからな!?」
「……やっぱりハーレムだ、これ……」
キットとのやり取りを目の当たりにしたマリモは、その感想を抱かざるを得なかった。




