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69.鬼とおっさん―6

 怪我の具合が特に酷かったブランは、落ち着いて安静にしていられるよう、別の民家を貸し与えられていた。


 ――というのは建前で、実際は、誰もブランの対応が出来なかったのが原因だった。


「ぅぅううう……うあああああ…………っ!!」


 民家の奥、隠された牢屋のような部屋に、ブランは閉じ込められていた。

 そこにやって来たグルゥは、ブランの様子が変わらないのを見て、重いため息をつく。


「嫌だ……来ないでください……父上っ…………!!」


 人が来る気配を察知したブランは、縄で縛られた両手足をバタつかせ、布団の上で暴れていた。

 本当ならグルゥとしても、こんな手荒な真似はしたくなかったが――


「わああああああああああああああああああああっ!!」


 この場から逃げ出そうと体当たりをしてきたブランを、グルゥはしっかりと両手で掴まえた。


「落ち着け、もうお前に危害を加えようとする人間はいない……お前は、自由になったんだっ」


 グルゥの言葉にもブランは聞く耳を持たず、グルゥの腕の中で狂ったように暴れている。


「もう嫌だっ!! 私を……私の体で、実験をしないでくださいっ!! 父上っ!!」


 ガリッ、と嫌な音がして、グルゥは顔をしかめる。

 ブランの歯が、グルゥの右手に容赦なく突き立てられていた。


 鋼のような皮を持つ『サタン』のグルゥにとって、それは大した痛みではなかったが、それでも一筋の血が流れる。

 だがグルゥにとっては、手の痛みよりも変わり果てたブランの姿を見る心の痛みの方が、ずっとずっと辛いものだった。


 アマツの民の必死の治療により、なんとか一命を取り留めたブラン。

 だが、目を覚ましたブランの精神は既に壊れており――幼児退行を起こしていたのだ。

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