69.鬼とおっさん―4
まず、アマツ公国は“鬼”と呼ばれる種族が統治している国だということ。
彼らの種族特徴は“白角”で、血気盛んな性格のものが多い。
「“鬼”という種族があることは知っている。私達『サタン』の、“形質反転”前の種族と言われているからな」
だが、実際に“鬼”を目の当たりにするのは、グルゥにとっても初めてのことだった。
魔人達の間には、まことしやかに囁かれている“とある噂”があったからだ。
(形質反転前の種族は、種族の血を穢した、形質反転後の血統を憎んでいると)
しかしカエデと共に村の中を歩く中で、グルゥはその噂が誤解であったことに気付く。
「よう、お前が噂の魔人さんか! 話に聞いてた通りすげぇガタイだな!」
「大賢者を倒したという活躍、聞いたぜ! 是非とも、その武勇伝を聞かせてくれよ」
種族が違うのにも関わらず、グルゥを姿を見つけるたびに気さくに話しかけてくるアマツの民達。
「彼らのサポートもあって、私はこの異世界でも、一人で生きていくことが出来たんだ」
「うむ……なかなか気の良さそうな連中じゃないか。私もすっかり、気に入ったぞ」
賑やかな酒宴の中を歩いていると、自身は一滴も酒を舐めてないのに、まるで酔っ払ってしまったような気分になる。
「ん、一人?」
が、カエデが放ったその言葉が気にかかり、グルゥはふと足を止めた。
「道中、マリモから聞かされた話では、七人の少年少女が異世界勇者となったようだが。カエデは、一人でアマツ公国に来たんだな」
「……ああ、そうだよ。私は、ずっと一人だ」
グルゥは指を折って、今までにあった異世界勇者の数をカウントしてみる。
カエデまで含めて、全部で六人。
まだ会ったことのない異世界勇者がいるのかと、グルゥは漠然と考えていた。




