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69.鬼とおっさん―3

 山岳地帯を上った先にある“キヌツ村”。

 アマツ公国に存在する集落の中で最も国境の近くに存在する村であり、アマツの民にとっての防衛拠点である。


 ワラキユ平野での戦いの後、休息と共に一夜を明かすため、村は珍しく大勢の“鬼”達で盛り上がっていた。


「がーっはっは!! お前ら、今日は祝宴だ!! 大いに飲み、食って、騒げーっ!!」


 集落の中央で、焚き火を囲むようにして盛り上がっている一団がある。

 その騒ぎよう、まるで山賊だとグルゥは見ていて閉口した。


「傷の具合は大丈夫か?」


「あ、ああ。あの軟膏、本当に即効性があるんだな。疑って悪かった」 


 グルゥの隣には、村を案内するカエデが並んで歩いていた。

 乾いた空気を纏う彼女のことが、グルゥはどうも苦手だ。


「治療前、村に入るのを拒んだのも疑っていたのか?」


「そういうわけじゃない! ……先の戦いで、アマツ公国の兵士達にも多数の怪我人が出ていたはずだ。私の治療よりも、他の者の治療を優先させてあげたかった」


「ふーん……?」


 腹の内を探るような目つき。

 カエデはまだ、グルゥのことを信用してはいないようだ。


「一つ、忠告をしておいてやる。アマツでは戦う人間のことを“兵士”とは呼ばない。“武士”と呼ぶ」


「そ、そうなのか。この地方のことはあまり詳しくないから……色々と聞かせてもらえると助かる」


 グルゥが頼むと、カエデはやれやれと肩をすくめつつも、色々なことを話し始めた。

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