7.対決とおっさん―7
「ぐ……!?」
いきなり現れた首輪にグルゥは困惑したが、すぐに鎖を掴んで引き千切ろうとした。
だが、
「チートスペル“活力吸収”」
呪文ようなものをアキトが唱えた瞬間、グルゥの全身から力が抜け、堪らずにその場に手をついた。
「な、何をしたんだ、貴様……っ!!」
「貴様、だと? 生意気な口を利いてんじゃねぇよ」
四つん這いのグルゥの顔に、思い切り前蹴りを食らわせるアキト。
普段のグルゥであれば、その強靭な体躯により蹴った相手を跳ね返してしまうところだが、何故か今は体に力が入らず、そのまま横に倒れてしまう。
「う……!?」
「ほらほら、何寝っ転がってんだ。躾はまだまだこれからだぜ?」
そう言って、アキトは首輪についた鎖を引っ張り、強引にグルゥの体を起こそうとした。
こんな辱めを黙って受けているわけにはいかないと、グルゥはもう一度『憤怒』の力を爆発させようとする。
だが――グルゥの身体には、何の変化も生まれなかった。
「そんな、どうして……!?」
「なーにしようとしてんだ? おっさん。そんな力んでクソでもする気かよ」
アキトはもう一度首輪を引っ張り、グルゥに強引に自分の方を向かせた。
月明かりを背にし、影になったアキトの表情を読み取ることは出来ないが、その口が愉悦に歪んでいることだけは分かった。
「まさか、『サタン』の血統の力を使おうとしてるんじゃねぇだろうなァ?」




