68.白き炎とおっさん―1
「ど、どうせ死ぬなら……私にお父様を譲りなさいよっ!!」
キットの窮状を目の当たりにしながらも、サリエラは容赦なく氷槍を連射した。
だが、ヴラディオは見逃していなかった。
魔力の勢いが、明らかに今までよりパワーダウンしていることを。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
キットをぎゅっと抱きかかえたグルゥに、無数の氷槍が降り注ぐ。
「どうして……どうしてその子ばかり愛するのですかっ!! お父様ぁぁぁぁぁッ!!」
サリエラはまるでタガが外れたように、無尽蔵の魔力を用いて氷槍を撃ち続けた。
「待て、サリーメイア」
それを制止したのは、意外にもヴラディオだった。
残っている左腕をサリエラの腰に回し、自らの下へ引き寄せる。
「……ッ!? 何故止めるのですかッ! 王よ――」
「サリーメイア……お前は誰よりも美しく強い、立派な“魔女”へと変貌した。だが、その力の使い方には、まだ慣れていないようだ。見てみろ……今のヤツに、氷による攻撃は通じていない」
氷が解けたことにより発せられた白い霧。
その霧を吹き飛ばすように――全身から迸る“熱”を発する、グルゥの姿があった。
「この“怒り”は……愛するものを守るための“怒り”だッ!!」
「白き炎の力……!? グルゥさん、自らの意思で発現したのかっ!?」
魔獣化ではなく、魔人の姿のまま、その力を行使するグルゥ。
まさか自分のサポートなしで扱えると思っていなかったため、ミノンは驚きの声を漏らした。




