67.口づけとおっさん―5
サリエラは、全ての感情を凍らせたような冷たい目で、変貌を遂げたキットの姿を見下していた。
「ずっと……気に入らなかったんです。年下のあなたが居るせいで、お父様の注目はいつもあなたばかりに……!!」
「それはこっちのセリフだ!! こんな手を使ってまで、親父を奪おうとしやがって!! お前のやってることは、サイテー、サイアクの行為だッ!!」
もはや二人の衝突は避けられなかった。
天に掲げた腕を無造作に振り下ろすだけで、サリエラが生み出した無数の氷の槍が、キットへと降り注いでいく。
だが、キットは目にも留まらぬ俊敏さで槍の雨を潜り抜けると、一気に祭壇を駆け上がっていった。
「早い……っ!? ですが、それならッ!!」
広げた手のひらから、祭壇に向けて寒波を放つサリエラ。
氷の波が地を這って、キットの足を凍りつかせその場に固定する。
「いかがでしょうッ!? その足を切り落とさなければ、お父様に辿り着くことすらも出来ませんよッ!!」
「あーもー、しゃらくせぇ……なァッ!!」
全身に溜め込んでいた電流を、キットは一気に放出した。
青白い電撃がそこかしこに迸り、祭壇を覆った氷を砕いてゆく。
「まさか……!? 私と同等の魔力をッ!?」
「“同等”なんかじゃねぇ……“それ以上”だッ!!」
キットの唸り声に呼応するように、電流が周囲を迸り、石造りの祭壇を砕いていった。
そして電流の矛先は、そのままサリエラへと向かう。
「まずい、サリーメイアッ!! ここは退け――」
「私が……あなたみたいな子に、負けるものですかッ!!」
本能的に危機を察知したヴラディオの言葉にも耳を貸さず、魔力の奔流に対し、サリエラも自らの全てをぶつけていく。




