67.口づけとおっさん―4
いったい、何が起きたというのだろうか。
落雷の直撃を受けたキット。
だが、その衝撃で倒れることはなく、むしろ力強ささえ感じるような立ち振る舞いだ。
「あれがキットの、真の姿なのか……?」
雷の中から現れたキットは、まるで別人のような姿だった。
金髪は銀色に代わり、肩の辺りまで長く伸びている。
グルルルと唸る口元からは、長く伸びた犬歯が姿を覗かせていた。
両手は鋭い爪を備えた獣のものに変貌し、銀色の毛に覆われている。
恐らくは、靴の中の足も同様の変貌を遂げているのだろう。
まるで狼――それも青白い電撃を全身に帯電した、銀色に輝く狼のようだった。
キットの中に眠る『強欲』の力が、その血統の秘められた力を呼び醒ましたのだろうということは、想像がついた。
だがまさか、それが実験までして覚醒したサリエラの魔力を、容易に弾き飛ばすまでの力を秘めていたとは。
「なんだこれは……。どういうことなのだ、説明しろユグドラシズッ!!」
この状況は、ヴラディオにも想定外だったのだろう。
怒声で問われたユグドラシズにも、明確な答えは無いようである。
「まあ、だが……我々としては、望ましいことじゃないか……っ」
ゆっくりと言葉を発したユグドラシズ。
その、隠し切れない喜びに震える声に、グルゥはゾッとするような禍々しさを感じた。
「魔神が与えし血統の力を、ここまで使いこなせるものがもう一人現れたのだ……是非とも、我らが手中に収めておきたい」
ユグドラシズが言い放った、歪んだ欲望。
やはりこの二人は、サリエラも、そしてキットさえも、手に入れるべき手駒の一つとしか見ていないようである。




