7.対決とおっさん―5
「ギャハハッ、早速、腕一本頂きだぜッ!!」
勢いづいたアキトは、光刃を引っ込めるとすぐさま次の攻撃を加えるべく接近してきた。
「この程度――」
光刃が抜けた箇所からは血が溢れ出したが、グルゥの表情はピクリとも動くことはない。
「ノニムの受けた苦しみに比べれば、どうということは無いッ!!」
真正面から斬りかかってきたアキトに対し、グルゥは無我夢中で拳を繰り出す。
アキトの剣は、鉄のようなグルゥの拳に弾かれた。
「やべっ、そういやコイツ、『サタン』の血統かよ!? 先にエンチャントすんの忘れた――」
「そのままくたばれ、異世界勇者めッ!!」
その隙を逃さず、グルゥはアキトに拳を叩き込む。
だが次の瞬簡、アキトの姿は目の前からいなくなっていた。
「なっ……!?」
瞬き一つしていないのに、どういうことなのか。
困惑するグルゥに対し、その声は背後から聞こえてきた。
「チートスペル“瞬間移動”。視界内の短距離であれば、俺はどこにでも移動出来るんだぜ」
とっさに裏拳を繰り出すグルゥ。
風が唸るような重い一撃だが、アキトは姿勢を低くし冷静にその拳を避けていた。
「チートスペル“衝撃波”」
アキトが、トンと人差し指でグルゥの腹を突っついた瞬間。
まるで猛牛にでもぶつかられたような、いやそれ以上の衝撃が、グルゥの体を襲っていた。
グルゥは港を真っ直ぐに五十メートル近く吹き飛び、ようやく止まった先で、夥しい量の吐血をする。




