67.口づけとおっさん―1
徐々に収まってゆく白い光。
視界に広がった景色に、グルゥは自らの目を疑った。
(いったい何が起きたんだ、これは……っ!?)
荒れ果てた大地だったワラキユ平野。
それが一瞬にして凍土となり、世界は白銀に包まれていた。
「ああ、美味しい……っ!!」
息継ぎのため、グルゥから唇を離したサリエラ。
その舌先には、血と唾液が混ざった体液が糸を引いている。
「もう、止めるんだ……。止めてくれ、サリエラ……っ!!」
グルゥは杭を引き剥がそうと腕に力を込めるが、まったく力が入らず、情けなさに涙が込み上げてきた。
理由は分からないが、サリエラは口づけをすることによって、何か新しい力に目覚めたようだ。
とすれば、このままサリエラのされるがままになるのは、非常に危険な気がする。
「素晴らしい……!! “血”を手に入れた半覚醒の状態で、これほどの魔力とは!!」
左手を広げたヴラディオが、感激の言葉を口にしていた。
ワラキユ平野を、一瞬で氷漬けにするほどの魔力。
寒波に巻き込まれた兵士達は、氷像のようにその場に凍り付いて動けなくなっている。
(これで……半覚醒……!?)
もはや目の前にいる少女が、自分の知っているサリエラではない、何か別のものになってしまったようで――グルゥは全てを諦めたようにうな垂れる。
「さあ、サリーメイア。あとはその男から、“精”を奪うのだ。さすれば、お前はこの世界を制するほどの魔力を手に入れるだろう」
(“精”……だと……!?)
ハッとして顔をあげるグルゥ。
サリエラは甘美なひと時を味わうように、胸の谷間に垂れたグルゥの血を指に絡ませ、舌先で舐っている。




