66.続々・覚醒とおっさん―9
(なんだ……何が起きた……!?)
グルゥはやっとの思いで視線が集まっている方向に目を向ける。
するとそこには、一糸纏わぬ姿の少女が一人、棺の上に立ち尽くしていた。
「サリ……エラ……っ!?」
もう力など残っていないと思っていたのに、その異常な姿に、グルゥは驚きの声を発していた。
全裸のサリエラは、全身に細かな紋様を描き込まれた状態で、何かを探すように周囲に目を配っている。
クンクンと鼻をひくつかせ、ようやくサリエラが見つけたもの。
それは――
「まあ、そこに居らしたのですね……お父様っ」
この場合のお父様というのは、当然、ヴラディオのことではない。
グルゥだ。
サリエラの目は、異常なまでに真っ赤に血走っていて、その口元からはグルゥを見つけた喜びで唾液が滴り落ちている。
「な……っ!?」
明らかに異常なサリエラの姿に、グルゥは息を呑んだ。
だが、その不気味な目の輝かせ方は、今までにも何度か見たことがある。
――サリエラが、内なる衝動を持て余し、夜這いを仕掛けてきた時の目の輝きだ。
だが今は、それに輪をかけて異常性のみが際立ち、サリエラは犬のようにだらしなく舌を垂らしながら、グルゥの下まで駆けつけてきた。
「や、やめろ……っ」
「どうしたんです? お父様。そんな姿で、私を誘っているんですか?」
「私に近付くな、サリエラ……っ!!」
グルゥが磔にされている姿を見ても、サリエラは驚くどころかキャッキャと無邪気にはしゃいでいる。
上半身裸のグルゥに頬を寄せたサリエラは、じれったさを露わにするように、下半身をグルゥの腰に押し付けた。




