66.続々・覚醒とおっさん―5
「素晴らしい……ッ!! これが魔人の持つ力だというのかッ! もっとだ、もっとその力を寄越したまえッ!!」
魔獣化への変貌の力を全て貪ろうと、ヴラディオはグルゥの胸に更に深く手刀を埋めようとする。
ヴラディオの全身に、脈打つ血管が浮き出ていた。
それほどまでに、グルゥから得られる生命力は大きい。
だから――ヴラディオはまだ気が付いていなかった。
グルゥの胸の奥底に触れた瞬間に、“黒き炎”がその指先に着火したことに。
「ウガアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」
炭化して崩れ落ちるヴラディオの手首。
ドレインが途切れた瞬間に、グルゥはついに魔獣への変貌を遂げた。
「な――」
驚愕するヴラディオを尻目に、剛毛を纏い一回り太くなったグルゥの手足が、影の枷を砕いていく。
また、一度着火した“黒き炎”は決して消えることなく、ヴラディオの右腕を上っていった。
「これが、サグレスを滅ぼしかけたという……ッ!!」
しかし、そんな状況だというのにヴラディオはまだ愉しげだ。
起き上がったグルゥがヴラディオの頭を噛み砕こうとした、その時である。
空中で交わる二筋の斬撃。
一つはヴラディオが左手で放った手刀であり、その一撃は、自身の右腕の関節から先を斬り落としていた。
そしてもう一つは――
「な……に……っ!?」
魔獣化したグルゥの体の中心を貫いたのは、一本の槍――いや、一本の杖だった。
それまで傍観をしていたユグドラシズが、突如、グルゥの体を突いたのである。




