66.続々・覚醒とおっさん―4
そんなグルゥを、ヴラディオはせせら笑った。
「なんだ、その反応は。まるで初夜を迎える処女のような初心さだな」
辱めるようなヴラディオの言葉にも、グルゥはグッと耐える。
向かい合うのは、自分の中の自分。
この男には、“白き炎”の力を使わないと勝てないと踏んだグルゥだが――未だ、その力の引き出し方は自身も分かっていない。
「病み付きになるだろう? 他者に生命を吸われる感覚は。貴様も、このまま我が血肉の一部となれぃ」
ヴラディオのドレイン能力が、その勢いを増していく。
どんどん力を失っていくグルゥ。
思考能力さえも働かなくなり、もはや打つ手はなくなっていた。
(ああ……私はまた、縋るしかないのか)
最後の手段に一縷の望みを賭け、グルゥは全ての意識を“そこ”に集約させた。
「私は、まだ……負けるわけには、いかないんだ」
「ほう、まだ口が聞けるというのか。これだけの生気を奪っていながら、その生命力さすが『サタン』の魔人よ」
「貴様と、対峙して分かった……何故、サリエラが身分を隠し逃げ出したのか。何故、ブランが私に助けを求めてきたのかが」
ボッと音が立ちそうな勢いで火がついた、グルゥの中の『憤怒』の炎。
だが、今はその力に手を伸ばしてでも――
「男として、父として……お前のようなやり方を、認めるわけにはいかないっ!!」
魔獣化を果たそうと、変貌を始めるグルゥ。
だが、溢れ出した生命力に、ヴラディオは歓喜の表情を見せた。




