66.続々・覚醒とおっさん―3
祭壇の上に倒れたグルゥは、すぐさま体を起こそうとした。
が、何かが手足に絡み付いてその動きを阻害する。
影だ。
ヴラディオの影が、蛇のようにグルゥに絡みつき、血に濡れた祭壇の上にその巨体を固定したのである。
「ぐ……ぅっ!?」
普段通りの力が出せれば、簡単に引き剥がせそうな影の枷。
ただ今は、蝙蝠によるドレイン攻撃を受けた後だ。
「終わりだ、魔人よ」
為す術を持たないグルゥの胸に、ヴラディオの手刀が突き立てられた。
「が……ッ!!」
鋭い痛みがグルゥの中心をはしる。
だが、問題はそこではない。
「な……んだ……これは……っ!?」
ドクドクとグルゥの心臓が脈打つ度に、ヴラディオの無骨な手に浮かんだ太い血管が膨らむ。
胸の痛みは、まるで何事もなかったかのように、徐々に薄れていった。
「どうだ? 他者に生命を吸い取られる感覚は? 直に何も感じなくなる、考えられなくなる」
ヴラディオは上からグルゥの顔を覗き込みながら、その反応を存分に愉しんでいた。
(駄目……だ……指先にも、もう、力が入らない)
胸の中央に傷を付けられているはずなのに、今はもう痺れてしまったように何も感じない。
それどころか、全身の痛みが薄れていく感覚に、心地良さすら感じ始めていた。
(これが……吸血鬼のドレイン能力……! 確かに、全てを委ねてしまいそうな、危うい力を持っている……!)
ぎゅっと固く目を閉じるグルゥ。
己の中に、意識を集中させる。




