65.続・覚醒とおっさん―9
ヴラディオの足元に転がった、干からびた二人の兵士。
対照的に、ヴラディオの血色は見る見るうちに良くなっていき、腕の怪我や、手足の接合面があっという間に治癒していく。
「な……!? なんだその能力は、化け物か……っ!?」
「化け物? それは、貴様のことだろう」
ヴラディオが右腕を横に伸ばすと、マントが広がり、祭壇の上に大きな影が出来る。
次の瞬間、その影からは無数の“実体を持たない蝙蝠”が生み出された。
「ぐおおおおおおおおおおおおおっ!?」
両腕を交差させ、なんとか頭と心臓を守ろうとするグルゥ。
蝙蝠はグルゥの体を浅く切り裂いていき、その一撃一撃は、大きなダメージではない。
だが、
(なんだ、この生気を奪われるような感覚は……っ!?)
蝙蝠が体を掠める度に、グルゥの中に“虚脱”としか言い表せない、異様な脱力感が蓄積していく。
途端に自身の巨躯が重たい枷のように感じ始め、膝が震えてくる。
「貴様は、敵のことを知らなすぎたようだな。よいか? 我は高貴なる血統、万物の頂点たるもの――」
防御姿勢のグルゥに対し、無造作に拳を振るうヴラディオ。
体格では圧倒的に勝っているはずなのに、その一撃のパワーに、グルゥは三メートル近く吹き飛ばされ祭壇の上に転がった。
「吸血鬼だ」
次の瞬間には、ヴラディオはグルゥの頭上にいた。
振り下ろされた鋭い爪による一撃を、グルゥはとっさに頭を動かして避ける。
祭壇が砕ける。
豆腐のように石を砕くヴラディオの拳だ、直撃すれば頭など簡単に吹き飛ばされるだろう。




