65.続・覚醒とおっさん―6
「ああ、もう……っ! 何やってるんだよ、グルゥさん……!!」
馬車に残ったミノンは悶絶していた。
ブランがヴラディオにやられた、その瞬間。
グルゥは何の合図をすることもなく幌から飛び出し、我先にと祭壇に向かっていったのである。
「オレたちも行くぞ、ミノン!!」
「だから、キットはダメだって! 何度言ったら分かるんだよ!」
後を追おうとするキットの腕を掴み、ミノンは必死に止めようとする。
(キットが力を使うことは、彼女の寿命を縮めることに繋がる。ボクは……それを知りながら、彼女を戦場に送り込むことなんて出来ない)
ミノンにはミノンの思いがあってのことなのだが、それはキットにはまるで伝わっていなかった。
「親父が頑張ってるんだぞ!! ミノンは、指を咥えて見ているだけなのか! それでもついてるのかこのヤロー!!」
「つ、ついてるけど……それが正常な機能を持っているかは……って、何を言わせるんだよ、もうっ」
暴れるキットを強引に幌の中に引きずり倒し、ミノンはキットの上に馬乗りになった。
起き上がろうとするキットを、強引に力で押さえつけようとする。
「ああもう、邪魔するなよっ!!」
(しょうがない……だけど、グルゥさんがいない今なら)
このままじゃ埒が明かないと感じたミノンは、ついに、そのことに触れることを決めた。
「分かってる……だろ? キミが力を使えばどうなるのか……っ!!」
急にトーンを落として話したミノンに、キットはハッとして動きを止める。
「知ってたのか?」
そのキットの答えが、雄弁すぎるくらいに全てを語っていた。




