65.続・覚醒とおっさん―5
「お前は……っ!! お前のその腐った性根は、私がこの手で叩き潰してやらないと気が済まないっ!!」
グルゥの黒角がみしみしと音を立て軋み、頭に巻いた布を払いのける。
露わになった黒角を見て、ヴラディオはほう、と嬉しそうに笑った。
「なるほど、これはなかなか活きの良い血肉のようだ」
「笑っていられるのも今のうちだ、ヴラディオッ!!」
この『憤怒』の力が、“黒き炎”によるものなのか、“白き炎”によるものなのか、それはグルゥ自身にも判断がついていなかった。
ただ今は、目の前の男をぶちのめしたい――その一心で力を解放していく。
だが、
「それ以上、王に近付くんじゃあないっ!」
「この化け物め、成敗してやるっ!」
それまで事の成り行きを見守っていた二人の兵が、グルゥの前に立ち塞がった。
グルゥの中に、僅かに力を振るうことに対しての抵抗感が生まれる。
「退け……退かないと、お前らも死ぬぞっ!!」
しかし、ここは躊躇っている余裕などないと、グルゥは構わずに突撃する。
二人の兵が同時に剣を構えた、その時だった。
「うむ、感心である――王のために、その身を投げ出すとはな」
ヴラディオの両手が、二人の兵の背中を同時に貫いていた。
「な……っ!?」
想像だにしていなかった出来事に、グルゥは思わず足を止めてしまう。
「自らの臣下を、盾として使うつもりか……!?」
「盾? ……いやいや、人聞きの悪いことを言わんでくれたまえ」
力無く両手をだらんと垂れ下げた二人の兵。
その手足や顔がみるみるうちに嗄れていき、まるで萎んだ風船のように、その姿は見る影もなくなっていた。
「彼らの血肉は、我が力となるのだ」




