7.対決とおっさん―3
グルゥはアキトの本質を探るため、あえてその名を口にすることにした。
「アキト、何故君は……『イルスフィア』に向かい魔人を殺すのだ。そうすることで、君に何の得がある?」
「いや、得っていうか……そりゃ、レベルアップは得に決まってんじゃん。色んなチートスペルが使えるようになるし、それに、魔人なんて悪者って相場が決まってんだろ? いや実際のところは知らねーよ? ただ、勇者に任命された以上、やるしかねーんだって」
それがアキトの答えだった。
少しでも、アキトに口から罪の意識や、殺人に対する躊躇の言葉が出るか期待したのだが、それらは全て無駄な思いだったらしい。
「それが君の……貴様の、答えなのか……」
だんだんとグルゥも、感情を押さえつけることに限界を感じ始めていた。
少しでも気を抜けば、『憤怒』のあまり理性を失ってしまいそうだ。
もしも町中で魔獣化した場合、その被害は甚大なものになるだろう。
だから、グルゥはアキトをここまで呼び出した。
魔獣化し、最悪アキトを手にかけることまで想定して――アキトに宛てた果たし状は、そこまでの覚悟をしてのことなのだ。
「ああ、そうだ。さっきの質問についてだけど」
そこで、ふとアキトは思い出したように語り始めた。
「そういえば、『イルスフィア』から連れ帰った女の子で、一人印象的な子がいるな。確か、すげーポイントが高かったヤツ」
「ポイント……?」
「まー、それはこっちの話。もしかしたら、ソイツがおっさんの探してる女の子なのかもしれねーな。いちいち名前まで聞いてねーから、俺には分かんねーけどさ」
つまりはアキトにとって、『イルスフィア』から連れ帰った魔人にはその程度の興味しかないのだろう。




