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64.覚醒とおっさん―8

「……ほう?」


 ヴラディオの表情が歪んだ。

 それは苦痛に耐えているようでもあり、愉悦に浸るようでもある。


 ブランは既に剣を捨てていた。

 その手に握られていたのは短剣ダガー――鎧の内側より取り出した、もう一本の武器だった。


「魔導が使えぬ私に、せめてもの格好付けにと与えて頂いた魔装具“白星の鎧”。このようなギミックが付け加えられていたとは、思いもよらなかったでしょう?」


 ヴラディオの右腕を、ブランの短剣が上から突き刺していた。


 剣や“白星の鎧”の力だけでない。

 この日が来るのを想定し、ずっと隠して磨き上げてきた、短剣の扱い方。


「なるほど……少しは策を考えてきたようだな。愚鈍の割には良くやったと、褒めてやろう」


 右腕を振るい、強引に短剣を引き抜くヴラディオ。

 乱暴なやり方に肉が抉れ、骨が見えるほどの深い一撃になっていた。


「だが、それが、我が貴様に送る最初で最後の賞賛の言葉だ」


 ヴラディオは握り続けていたブランの剣を天高く放り投げる。

 くるくると回転する刀身が、光を反射し輝いた。


「手を出すなよ、ユグドラシズ。我はこの手で愚鈍を殺さなければ、気が澄まん」


 落下してきたブランの剣を、左手でキャッチするヴラディオ。

 短剣を構えたブランと相対する。


「良いか雑兵共ッ!! ただ今よりこの祭壇上は神聖な決闘の場と化したッ!! 余計な手出しをしたものは、我が即刻処刑してみせようッ!!」


 大地を揺るがすようなヴラディオの宣告が、ワラキユ平野の空気をビリビリと揺らした。

 エルゼシュトを始め、加勢しようとしていた兵達の動きが、一斉に止まる。

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