表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
623/984

64.覚醒とおっさん―6

「そう……ですか。私は王の……仰せの通りに」


 頭を垂れ非礼を詫びたブランは、立ち上がり献上物を引き下げようとした。


「ですが……もうこの貢物は、必要ありませんよね」


 両手で布を広げ、その繊細かつ壮麗な刺繍を、まじまじと眺めるブラン。

 すぐに退かない姿勢を見て、ヴラディオのこめかみに青筋が浮かんだ。


「貴様、聞こえなかったのか? ならばその耳、引き千切っても構うまいな――」


「いえ、私は……この貢物の使い道を考えていただけです」


 そう言って、ブランは大きく広げた布をふわりと宙に放り投げる。

 ヴラディオとの間に遮蔽物が生まれた、その瞬間だった。


 金属が擦れるような高い音。

 あっという二人の兵士の驚きの声と共に、その場の空気が凍りついた。


 鞘から引き抜いた腰の剣を、ブランは布越しにヴラディオ目掛けて突き刺したのだ。


「なん……だと……?」


 ポタポタと滴り落ちるヴラディオの鮮血。

 剣先をつたい、刺繍で彩られた布が赤く染まっていく。


「これが私の答えだ……暴君ヴラディオ……ッ!!」


 ダメ押しに、ブランはグッと剣を押し込もうとする。

 だが、その剣先は微動だにせず、そこでようやくブランは異変に気がついた。


「貴様は、本気で……その程度で我を殺せるとでも思ったのか?」


 血に濡れた布が、その重みで地に落ちていく。

 ブランが突き出した剣先は、ヴラディオの右手によってしっかりと受け止められていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ