64.覚醒とおっさん―5
運ばれてきた棺と共に上がってきたブランを見て、ヴラディオは不愉快そうに顔をしかめた。
「貴様、何をしにきた」
その問いブランは何も答えず、ただ、恭しくヴラディオの前に膝をつく。
献上しようと差し出したものは、絢爛な刺繍が施された、一枚の布だった。
「王女のお召し物でございます。……衆目の前で肢体を晒すわけには、いかないでしょう?」
ブランの言葉を、ヴラディオはフンと鼻で笑って退ける。
「貴様は、何も分かっていないのだな」
「どういう意味でしょうか」
「この儀式において、肌を隠す布を身に付けることなど無粋の極みよ。見てみるがいい、その棺の中を」
ヴラディオの指示により、祭壇の中央に棺が置かれる。
二人の兵士は顔を見合わせたが、開けろ、というヴラディオのジェスチャーを受け、恐る恐るその蓋をずらしていく。
「こ、これは……っ!?」
その中を見て、驚愕の表情を浮かべ固まるブラン。
棺の中で眠るサリエラは、一糸纏わぬ姿の上――その全身に、赤茶けた塗料でびっしりと幾何学的な紋様を描かれていた。
「お、王よ……あなたは王女に、何をなさるつもりなのですか!?」
「それは、すぐに分かることよ。この舞台に貴様のような愚鈍は不要だ、さっさと下がって、指でも咥えて見ておれ」
ヴラディオの冷たい一言を受け、ブランの目の奥に一瞬、怒りの炎が見えた。




