7.対決とおっさん―2
だがいくら子供だろうと、犯した罪は罪なのだ。
それは必ず償わせると――グルゥは心を鬼にすることを決めた。
「ノニム、という少女の名に聞き覚えはないか」
「無いよ。つかおっさん、まずは自分の名を名乗れよ。普通はそれが礼儀ってもんじゃねーの?」
グッと、湧き上がる怒りに拳を握り締める。
礼儀だと? 貴様如きが何を言うか――叫びたい衝動を、寸前のところで堪える。
「グルゥ。グルゥ・ヌエツト・マニエルパだ」
「ふーん……。やっぱ知らねーわ、女の子の名もおっさんの名も。ちなみに俺はアキト、今さら名乗らなくても知ってると思うけど、異世界から来て勇者をやってる」
その名についても、情報収集をしていた段階で既に聞いていたので、今さらグルゥは驚かなかった。
ただ、復讐を果たす対象に、固有名詞がついただけだ。
人影の無い深夜の港に、海からの生温い潮風が吹いた。
目元まで伸びたアキトの黒髪が風に靡き、その目が、未だあどけない幼い少年の目であることをグルゥは再確認する。
「お前は……いったい何歳なんだ? その若さで、随分と活躍を重ねているようだが」
「お、なんだおっさん、もしかして取材の記者だったのかよ。俺は中二……って、こっちの世界にそんな概念はないんだっけ。十四歳だよ。どうだ? 見た目より若く見えるか?」
たった十四歳の少年が、どれだけの人を殺め、どれだけの罪を重ねてきたのか。
想像するだけで心が震えた。
そしてこの少年は、未だ自らの罪に対して、無自覚だ。




