64.覚醒とおっさん―1
グルゥは困っていた。
「……どうしよう」
両手に木の枝を持ち、茂みの中から様子を窺うグルゥ。
ワラキユ平野に続く道は、これ以上身を隠せそうな場所が無く、道の先には大勢のジルヴァニア兵がいることが予想された。
「もう、グルゥさんのパワーに任せて突っ込みます?」
「バカモン! そんな無茶、出来るわけないだろう」
「じゃあ、覚醒実験ってのが始まってからドサクサに紛れて乗り込むか? 親父」
「いや……それだとサリエラを助けるのに間に合わない気がするぞ。うーむ」
目的地まであと一歩というところで、踏み出せない三人。
すると、三人が身を隠していた茂みの前を、一台の馬車が通ろうとする。
「まずい、隠れろ」
ジルヴァニアの馬車だろうと判断し、グルゥは慌てて身を低くした。
が、一番図体がでかいグルゥの背中は完全に隠すことが出来ず、野道からでも微妙に視認出来るくらいの隠れ方になってしまう。
無情にも、馬車はグルゥの目の前で止まった。
「ま、まずい……」
「なんだ、ここに居たのですか」
慌てふためくグルゥだが、馬車から聞こえてきたのは聞き覚えのある声である。
「探しましたよ。さぁ、早く幌に乗ってください」
爽やかな笑顔に、白い歯がきらりと光る。
馬車の御者を務めていたのは、ブランだった。




