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63.五彩の騎士・白とおっさん―7

「母……上……」


 自分の上に乗り、無表情のまま首を絞めてくる母の姿を見て、ブランは目尻に熱いものが込み上げてくるのを感じた。


「私が……楽にしてあげます、だから……」


 悲しかった。

 やせ細った母の力では、首を絞め上げることが出来ず、自分すらも殺すことが出来ないのだという事実が。


「もう、終わりにしましょう。こんな狂った家族ごっこは」


 母を優しく突き飛ばしたブランは、反対にその上に馬乗りになり、枯れ木のような首を両手で絞める。


 母は抵抗しなかった。

 だから、絶対に泣かないと決めた。


 これが、母と子で掴み取った唯一の救いの道なのだと、そう確信していたから。

 だが――


「きゃあああああああああああああああああああああああっ!!」


 物音を聞きつけて駆けつけた侍女により、ブランの行為は明るみになった。

 大勢の大人たちがやって来て、力任せに拘束された。


「やめろっ、これは私がやらなきゃ……やらなくちゃいけないことなんだッ!!」


 精神が崩壊した母は、その日以来一言も喋ることはなく、ただベッドの上で外の景色を眺めるだけの生活を送るようになった。

 ブランは王妃を殺そうとした罪を問われ、投獄された上に、数ヶ月間に渡る尋問を受けた。


 全ては、ジルヴァニア王の指示の上での処罰だった。

 だが、過酷な訓練や人体実験を行わない牢獄での生活は、ブランにとってはむしろ、人生で初めての心穏やかな日々だった。

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