63.五彩の騎士・白とおっさん―5
ジルヴァニア王国第一王子、ブラン・クランシェ。
彼の運命が変わったのは、五歳の誕生日の時だった。
「いやぁっ」
その時の光景を、ブランはずっと忘れることが出来ない。
それまでは、自分はいつか王の跡を継ぎ、ジルヴァニア王国を率いる人間になるのだと信じていた。
だが目の前には、王の平手打ちを受け、鼻から血を流して倒れ込む王妃――母の姿があった。
何故、こんなことになってしまったのか。
幼いブランはその理由を理解することが出来ない。
「使えぬ女だ……ッ!! このような、何の力も持たぬ凡骨を産み落としおって」
唯一分かっているのは、自分が、どれだけの魔力を持っているのかを調べるテストを受けさせられていたということ。
だがブランは、そのテストにおいて何の成果も挙げることができなかった。
魔導の才能が、無かったのだ。
(ジルヴァニア王国は、魔導の力で栄えてきた国家だ。その跡継ぎが“無能力者”だと分かれば、王はその事実を許すことが出来なかったのだろう)
その日より、ブランとその母である王妃は、ジルヴァニア王より虐待に近い扱いを受けるようになった。
来る日も来る日も魔力を高めるための訓練と人体実験を受けさせられ、精神的にも体力的にも追い詰められていくブラン。
また次の子を宿すため、王妃は毎夜のようにジルヴァニア王に抱かれたが、不思議なことに新たな子が出来る気配は一切無くなっていた。
(私が、魔法さえ使えていたなら)
そしてブランが十四歳の時、決定的な出来事が彼の身を襲った。




