7.対決とおっさん―1
ふらふらと港の縁を歩く少年。
その手には土産の包みを持っており、まるでいっぱしの大人のような態度で、鼻歌を歌いながら進んでいる。
だが、その足はある地点でピタリと止まることになった。
「あのさぁ……。マジで馬鹿だろ? お前」
少年の進行方向を塞ぐように立ちはだかったのは、グルゥだ。
その手には何の武器も持たず、丸腰のまま少年に近付いていった。
「せっかく人が楽しく飲んでるのにさぁ。なにこんな場所まで呼び出してくれちゃってるわけ? 果たし状のつもりかよ、コレ」
「そうだ。……私はお前に、用があってここまで呼び出した」
ついに探し出した、愛娘を奪った憎むべき少年。
視界に入れているだけで脳みそが沸騰しそうになり、『憤怒』に反応した黒角がメリメリと布を押し上げた。
「へぇ? 用って何? まさか愛の告白でもするつもり? わりぃーなおっさん、俺にはそっちの趣味は無いんだわ」
「……本当に、忘れているのか? それとも、酔っ払ってふざけているだけなのか」
少年は、未だに自分が呼び出された理由について理解してないようである。
その軽薄な態度に薄ら寒いものを感じ、グルゥの中でますます『憤怒』が大きくなる。
「いやいや、これでも俺、未成年だから。勇者だし、そういうルールはちゃーんと守るつもりだぜぇ? それに俺、酒って何が美味いのか分かんねーや」
そういうところは、確かにまだ子供なのだろうと。
へらへらしながら話す少年に、グルゥは複雑な感情を覚える。




