62.続・告白とおっさん―5
――コクア城内の一室にて。
ハッと目を開けたツァイセは、自身が今どこにいるのか、それも分からずに困惑していた。
「あ、やっと目を覚ましたんですかぁ?」
甘ったるい声が枕元でする。
そこには、濡れたタオルを絞っている、『サタン』の血統の女の姿があった。
「お前は確か……イルスウォードの一員で、ニフラといったか」
「そうですぅ。ケントラムから脱出する時に、あなたが倒れていたので助けちゃいましたぁ。今までずっと寝てたんですよ、気は確かですかぁ?」
そう言って、タオルでツァイセの体を拭いてやるニフラ。
目の前に現れたバカでかい二つの膨らみに、何故か目のやり場に困ったツァイセは視線を逸らした。
「そう……か。少しずつ、思い出してきた。私は、異世界勇者に負け、そのまま操られて……」
「……その時の記憶は、残ってるんですね。あまり思い出したくないことは、思い出さない方がいいですよぉ」
ツァイセは自身の誇りであった、二つの翼も斬り落とされたことを思い出し、悔しさに震えた。
だが、それ以上に――開けてはいけない記憶の扉があった。
「そう、だ……それから私は、あの、『マモン』の子供と戦って……」
目を見開いて、わなわなと震えだすツァイセ。
異変を感じ取り、ニフラも体を拭いていた手を止めツァイセの肩に手をやる。
「ど、どうしたんですかぁ!? ちょっと落ち着いて――」
「ああ……あああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
響き渡る絶叫。
誇り高き『ベリアル』の血統には似つかわしくない、恐怖に囚われての叫びだった。
「ダ、ダメだ……アイツは、アイツは危険すぎる……ッ!!」
記憶が途切れる直前、ツァイセの脳裏に残っていた光景は――雷電を纏いし白き獣――そして――血の色に光る禍々しき眼光――




