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EX1.眼鏡とおっさん

 テュルグナに辿り着く前の道中、グルゥは羊皮紙に描かれた地図と睨めっこをしていた。


「んーっと、私たちの現在地はここで、方角はこっちで合ってるから……」


 その様子を、キットはじーっと興味深そうに眺めている。

 地図をぐるぐる回しながら、グルゥは進行方向を確認する。


「……ん、なんだ? そんなに地図が気になるのか? 見てみたいか?」


「いや、地図なんてさすがに何度も見たことがあるよ。それよりも、それ。親父が顔に付けてる、それ」


 じーっと、グルゥの顔を見つめるキット。

 あまりの距離の近さにグルゥは若干赤面しつつ、これか、と言って顔から外してみせた。


「老眼鏡だ。……この年になると、そろそろ小さい文字が読みにくくてな」


「ローガン卿……?」


「いや誰だそれ!? 人名みたいに言うな!? 眼鏡だよ眼鏡、視力を補強してくれる道具だ」


 盗賊であり、ほぼ子供たちだけのコミュニティで暮らしていたキットの周りには、眼鏡を掛けた人間などいなかったのだろう。

 ひとしきりキットに触らせた後、グルゥは老眼鏡を掛け直した。


「なかなかお目が高いねぇ、チビガキ」


 すると、グルゥの服の肩口から、ミルププがひょっこりと顔を出す。


「ん? オレの目は別に低くも高くもないぞ」


「そういう意味じゃねぇよ。おっさんの眼鏡に反応するとは、なかなか“分かりみが深い”って俺様は言いたいのさ」


「わ、わか……?」


「何せこのおっさんの図体だぜ!? 全身筋肉の塊でゴリゴリの男のクセに、実は経理で、眼鏡で知的アピールなんてしてくんだ!! くーっ、あざてぇ、あざてぇよこのおっさん!! どんだけ属性盛れば気が済むんじゃい!! ギャップ狙いすぎだろ!!」


「ギャ、ギャフン……?」


「気にしなくていいぞ、キット。ミルププはちょっと……オタクなんだ」


 その後、眼鏡とおっさんの親和性について延々と語るミルププだったが、キットは途中で飽きてずっと蝶々を追っていた。

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