1.孤児とおっさん―5
「ほ、本当にヘンなヤツだな、おっさん! なんで、ガキのオレに対してそんな気を遣ってんだよっ!」
「え、ええ……。いやいや、人と会う時には、誰に対しても敬意を持って接するのが、普通のことなんだぞ」
「なんだよ、それ。そんなこと言う大人、初めて見た。あー、おかしい……」
涙を浮かべて笑い転げるキットを見て、グルゥは思わず、その大きな手をキットの頭の上に乗せる。
キャップ越しだが、その手の温もりにびっくりしたのだろう。
キットは驚いた様子で、グルゥの顔をじっと見つめていた。
「な、なんだよおっさん」
「あ、あぅ……ご、ごめんね。つい」
「つい?」
「いや、その……。娘が、いたんだ。君と同じくらいの年の、女の子が。だから、その」
「あーっ!!」
どう弁解すればいいか分からないグルゥに対し、キットは大きな声を出して立ち上がって、グルゥの顔面に人差し指を突きつける。
「おっさん、ロリコンとかショタコンってヤツだな!! ちょーこえぇぇ!! 町でオレたちを買おうとする、やべーヤツらと同じ人種なんだ!!」
「ち、違う、私には断じてそんな趣味は――って、ちょっと待ちなさい!」
またキットは逃げ出そうとしたが、グルゥには、今のキットの言葉にどうしても聞き捨てならない部分があった。
後ろから羽交い絞めにして、何とか逃げ出そうとするキットを押さえつける。
「ギャー!! やめてくれ、いくら何でも、おっさんの相手は無理だって!! 色々と無理だろ、なんかそういう、性別の壁とか、サイズ感とかっ!!」
グルゥは、錯乱状態のキットが放つ言葉を聞いて、呆れを通り越して悲しくなってきた。