61.告白とおっさん―1
その夜、道すがらに見つけた旅人向けの宿に泊まっていたグルゥは、妙な気配を察知して目を覚ました。
「ん……? 妙な音が……?」
部屋の中に絶えず響いているのは、ぶぅぅぅぅんという耳障りな音。
ハエでも紛れたのだろうかと、グルゥはうとうとしながら目を覚ます。
「どわああああああああああああああああああああああああああっ!?」
グルゥの目の前にいたのは、ハエだった。
ただしそれは、全長三十センチ近くという規格外の大きさのハエだ。
そんなハエが、グルゥの胸板の上にピタッと止まっていたのだ。
「あっちいけ、こら、こらぁっ!」
グルゥが半狂乱の状態で腕を振り回すと、ハエは開いていた窓から外へ飛んで行く。
「なんだよ親父、うっさいなぁ……」
同室で寝ていたキットが不満げに声を漏らす。
ミノンも目を擦っていて、グルゥの騒ぎで起きてしまったようだった。
「い、いや、ハエが……」
「ハエくらいで騒がないでくれます? ボクもキットもぐっすり眠ってたのに」
「ごめんなさい……」
ミノンに怒られて、グルゥはしゅんとしょげ返る。
今の見たこともないような大きさのハエは夢だったのかと、グルゥは首を傾げた。
「おや……?」
しかし、それが夢ではなかったことは、枕元に置かれた一通の手紙が証明していた。




