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6.過去とおっさん―10

 グルゥの復讐の是非について、分からない、とキットは言っていた。


『そりゃあ、親父にはあまり危険なことはして欲しくねぇよ。だけど、もしも親父がそこまで決意して、異世界勇者を倒そうっていうなら……それを止める権利は、オレには無いと思うんだ』


 想像以上に深く考えていたキットに、グルゥはそうだな、と頷くことしか出来なかった。


『なぁ、一つだけ約束をしてくれ。もしも復讐を行う時は、絶対にオレに言ってからやるって。…………え? どうしてって……危なっかしくて、見てられないんだよ、親父。異世界勇者の話をするときは、あまり好きじゃない、怖い顔をするから、さ』


 そう語ったキットに、グルゥは内心すまない、と謝ったのを覚えている。

 キットの願いは、グルゥがしたもう一つの誓いに反するからだ。


 つまり、復讐には絶対にキットを巻き込まない――と。


「いでっ、どこ見て歩いてんだテメ――す、すみませぇぇぇん!!」


 千鳥足で町を歩いていた酔っ払いがグルゥにぶつかり啖呵を切ろうとしたが、グルゥの体格と、その顔を見上げて確認するなり、悲鳴をあげて逃げ去ってしまった。


 それだけ自分が恐ろしい存在に見えるのか。

 ――今の顔つきだったら見えるだろうなと、グルゥは自嘲するように笑った。


 キットを寝かしつけた夜の九時過ぎ。

 グルゥは一人でテュルグナの町を歩き回り、情報収集をしていたのだ。


 異世界勇者に関する情報は、それこそ何も聞かなくても集まってくるほどだった。


 暗い顔をした人々が口々に愚痴を漏らし、また町には、“勇者歓迎”“ようこそ勇者様”などという看板やアーチが、至るところに設置されていたからだ。

 その出来の悪さを見るに、恐らくは何かを言われて慌てて作った、急造のオブジェのようだが。


「……居た」


 噂通りだ、とグルゥは手の中のメモを握り潰す。


 ガラス越しに中の様子を窺うグルゥ。

 女性がサービスをして酒を注ぐような夜の飲み屋に、探していた少年の姿は存在していた。

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