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60.続・黒き炎とおっさん―3

「申し訳ございません、申し訳ございません…………ッ!!」


 ようやく正気に返った若い給仕は、床に額を擦り付ける勢いで土下座し、必死に謝った。

 ネアロは、衆目の中、パンツ一丁のまま立ち上がって給仕に言い渡す。


「さすがの私もこの件にはご立腹だよ」


「本当に、本当に申し訳ございませんでした……ッ!!」


「謝っても許されることではない。貴様に言い渡す罰は……紅茶のお代わりをもう一杯、の刑だ」


「…………え?」


 張り詰めた空気がその瞬間に、穴の空いた風船のように萎んでいった。

 それを聞いて、突っ伏していたヴァングリフは思わずクスッと笑ってしまう。


「聞こえなかったのか? 熱々の紅茶をもう一杯、だ。……ちゃんと君の手で、君自身が持ってくるのだぞ。でないと君は、ずっと今日の一件を引きずることになるからな」


 ネアロの一言に、何処かからパチパチと拍手が起こり、拍手の輪は広がって、いつの間にか食堂中が大喝采に包まれていた。


「さすが、我らが王は広い心をお持ちね! パンツ一丁だけど……」

「ああ、王は僕たちの誇りさ! ……パンツ一丁だけどね」


「お前たち!! 私を称えているように見せつつ、いじるのを止めなさいっ!!」


 ネアロのツッコミが入って、食堂はわっと大きな笑いに包まれる。

 失敗をしてしまった給仕も、泣きながら笑うという変な表情をしながら、今度こそきちんと紅茶を運ぶべく、年配の給仕と共に厨房へ戻っていった。


「まったく、コイツらは……王をなんだと思っているのやら。それで、話の続きだが――」


「いやパンツ一丁のまま続けるのかよ」


 さすがのヴァングリフも、その点には触れざるを得ない。


 ネアロ・ビルヴァーチェ。

 広い心を持ち、人望にも厚く、民からも気さくに話しかけられるような王だが、それらの長所が全てぶっ飛ぶほどの変人であった。

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