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60.続・黒き炎とおっさん―2

 それを全く気にすることなく、上機嫌な男の前に、給仕が一人やって来た。


「お待たせしました、紅茶のお代わりと生クリームのチューブです」


「ありがとう、そこに置いておいてくれないか」


 本当に持ってきたと、ヴァングリフは頭を抱え、見ているだけでおえっとえずいてしまった。

 失礼なヤツだな、と小言を零した男は、やって来た生クリームのチューブを急いで取ろうとした。


 が、そのせいで紅茶を置こうとした給仕と手がぶつかり――


「ああッ!?」


 男の膝の上に落下する紅茶のカップ。

 割れなかったものの、中身が全部、男の下半身にかかった。


「おいおい、大丈夫か!?」


「…………フ、フフ」


 ヴァングリフは身を乗り出して心配したが、男は不敵な笑みを浮かべるだけである。

 給仕は顔面蒼白となり、その場に固まった。


 そして、男の目がギョロリと給仕に向けられた、その瞬間である。


「あづいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃっぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! じぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!! ごおり、ごおりィィィィィィィィィィィィ!!」


 やはりダメだったか、とヴァングリフはテーブルの上に突っ伏し脱力した。

 紅茶を零した給仕は、唇をわなわなを震わせ、呼吸すらうまく出来ないのかヒューヒューと妙な音を立てている。


 見かねた他の給仕が集まり、まとめ役と思われる年配の『ベルゼブブ』の給仕が、若い給仕の腕を掴む。


「あんた……何やってるの!? ネアロ様に不敬を働いて、もうこの国じゃ生きていけないよッ!!」


 そう、給仕に総出でズボンを脱がされ、下半身に濡れタオルをあてがわれているこの詐欺師のような風貌の男こそ――『コクア』の王であり、イルスウォードの総帥を務める、ネアロ・ビルヴァーチェその人である。

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